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じいちゃんがしんだ
あまりに突然で、じいちゃんの選択によるものだった
空は晴れていて、いつも通りの道順でじいちゃんちに向かって、空は晴れているし花は色彩が濃くて生き生きと咲いていた
警察が神妙な面持ちでばあちゃんとお父さんに話しかけている
若そうで、同い年くらいの女の刑事さんだった
医者が来て死亡確認をして
推定時刻は昨晩の10時ごろらしい
倉庫からは私がマルタで買ってきたグラスと、お母さんがバレンタインにあげた金箔入りの飲みかけのお酒が出てきた
見た瞬間、なんだよそれ、じいちゃんって思った
こんなさいご、ないじゃんか
楽しかったじゃんいままで
毎年手作りのバレンタインあげてたし、正月はじいちゃんが買ってきたカニ食べて笑って、ばあちゃんのご馳走を褒めてさ
なんて賢い死に方なんだろうって思ったよ
でも残された方は悲しくてさみしくて話したくて
もうどんな事言ったって戻ってこない
死ぬなとはいわないよ
それが希望なんならね。
でも死ぬのなら、せめてありがとうって伝えたかった
こっちとしてはね。全部こっちサイドの話なんだけど
お父さんは前日に会ってた
お父さんは自分を責めているはずだ
異変がなかったんだから仕方ないけど絶対責めているはずだ
青天の霹靂とか、寝耳に水とか、そんな感じだ
天候と、過ごしやすさと、死のコントラストが強すぎてかけ離れすぎていてこの世が美しくみえてしまった
普段は流れていく景色なのに、草木も花もいまを生きている様子がひしひしと伝わってくる
博識で、つまらないギャグ飛ばして、ばあちゃんを褒めて、悪口を言わない
ただ寝たきりにはなりたくないという強い信念は常々聞かされていた
どうせ世話になるもんなのになって思ってたけど、実際に行動に移すとはね。
衝動的だったのかな
多方面への手紙とかあって、本当に計画性を感じだけど
この空虚な気持ちはどこへ向かえばいいのか
日常はやってくるし、それに乗っていかなきゃいけないのはなんてキツイんだろう
もう誰も、自分で自分をあやめることなんてしてほしくない
またそんな出来事が起きたら、私はこの先生きていける自信がない